関西学生ヨット夏期選手権大会
数多くあるマリンスポーツの中で最もエキサイティングで、実に見応えのある470クラス(ディンギーヨット)これは世界中で行われているクラスでオリンピック種目にも採用されている。
アテネオリンピックでは男子470クラスで銅メダル、また少し前になるが女子470クラスでも銅メダルを獲得したクラスでもある。

ここに紹介するのは「関西学生ヨット夏期選手権大会」と、いっても「インカレ」の予選のそのまた予選にあたるといわれるレースだが、関西水域エリアから、大阪大学、大阪市立大学、大阪外国語大学、大阪経済大学、大阪府立大学、関西大学、関西学院大学、近畿大学、神戸大学、和歌山大学、神戸大学医学部、兵庫歯科大学、そして甲南大学の18チームが参加している。この大会は団体戦で3艇が1チームとなるが、艇数の都合や乗員不足などで、3艇が揃ったのは、10チーム。その3チームの総合得点で争われる。さらにこのレースは男子、女子の区別もなく、艇、乗員共にイコールコンディションで行われるのも他に類を見ない魅力のひとつだ。

レースは合計8レースが行われ、「470クラス」と「スナイプクラス」が同日、同エリアで、スタート時刻をずらせて行われる。
470クラスは画像でも分かるように「スピンネーカー」と呼ばれる第3のセイルを使用するが、スナイプクラスには、この第3のセイルがなく、ジブセイル(前のセイル)を風上に向かうレグも、風下に向かうレグもメインセイルとジブセイルのみで走りきる。風上レグでは走り方は470クラスと差はないが、風下に向かうレグでは、スピンポールに似た、ウイスカーポール(頬ひげポール)を利用しジブセイルをコントロールする。
ここでは話題を470クラスのみに絞らせていただく。

以前、日本も「アメリカスカップ」に参戦した頃はヨットレーシングも多少は話題になったことがあったが、それ以来すっかり陰を潜めてしまっている。とはいえ、この470をはじめスナイプ、FJ、などの2人乗りから、1人乗りのレーザー、シーホッパーなどのディンギーレースから、セーリングクルーザーのレースも根強く続けられているのも事実だ。

レースはウエザーマーク(風上マーク)での見学は実に迫力がある。スタートからタッキング(ジグザグ)にこのマーク一点を目指し参加40艇ほどが押し寄せてくる。
470のレースの見学は初めてではないが、この日の迫力は以前見たパワーとは全く異なっていた。後でレースリゾルトを見て気づいたのだが、筆者の見たレースは幸いにも、最終のレースだったようだ。

風は時折西に振れるが、その角度はあまり大きくはない、その風に合わせて走りながらスタートフォーンを待つもの、ヒーブツーで身構えるものと様々である。
コミッティボート周辺のエリアは470とスナイプが入り交じり、海面が真っ白に輝いていた。

迫力に満ちたマーク回航。
これには思わず魅せられてしまった。やがて、クラス旗が揚げられ、そしてP旗が揚げられた。
「少し西寄りが有利かな?」と自分自身でも生意気にコース設定をしながら見つめていた。
スタート風景も画像に納めたかったが、なにより一般見学のボートなので、スタートエリアからはかなり離れた場所での見学。
シバーからジャストトリムされた各艇が一斉にスタートしたが相変わらず、誰が誰だか分からない・・・もちろん、先日取材した甲南大学に目を向けていたのだが、リコールナンバーも把握していなかったため、スピンの色で見分けるしか方法がなかった。
全艇がスタートした後、フルスロットルでウエザーマークに向かう。ギリギリでトップ集団のマーク回航に間に合わせることに成功!
この迫力はファインダーを覗くより、肉眼で見る方がレースそのものの展開を楽しめる。
普段セーリングクルーザーのレースを見慣れているのとわけが違い、スピード感、混戦の凄さ、迫力の違いに唖然とさせられてしまった。
見ている視線が低いからなのか、モータースポーツのように定まったコースがないためか、左右のエリアからひとつのマークを目指してくるためか、このマーク回航はF-1などのモータースポーツよりも迫力を感じる。

モータースポーツにはモータースポーツの良さはあるし、野球だって、サッカーだって、バレーだって、ゴルフだってそれぞれの迫力や緊迫感はあるが、オリンピックや国体競技の中で、大きな道具を利用して行う競技は他に見あたらないし、こんな素晴らしいスポーツを、社会的な認知不足のままで終わらせているのはもったいない気がしてならない。
そんなことを胸の中で考えながらスピンネーカーの揚がるのを見つめていた。
そんな中、トップ艇団で馴染みのスピンネーカーが揚がる!青、白、赤のトリコロールカラーだ。
モータースポーツだと一列でコーナーを立ち上がって行くが、470の場合は二列、三列でマーク回航し、そのまま二列、三列のまま立ち上がって行く。
ウイングマーク(サイドマーク)まではフレッシュウインドの奪い合いとスピード争い。
このレグは風を横方向(アビーム)から受けるため、艇は極端にヒール(傾く)し、それを押さえるためクルーはフルトラピーズの体制をとる。これも470の魅力のひとつだ。
これはレース中のすべてに言えることだが、クルーとスキッパーのコンビネーションが最も試されるレグでもある。少しでもタイミングがずれるとゴーダウン(沈)し、そのレースはリタイアを余儀なくされてしまう。

ちなみにこの日の風速は6m程度で、時折吹き降りるブローが8m程度、470にとって最も見応えのある風だった。